2008年12月24日水曜日

第5話:返事

夕凪と別れた後、五郎が家に着いたのは、時刻が二十三時を過ぎた頃だ。
五郎は自分の誕生日が終わる事を意識していた。後、一時間も経たない内に、今度はクリスマスイブを迎える事になる。その前に五郎は、家に着いた事を夕凪にメールをした。
五郎は恋愛に不器用な夕凪に気付いている。その上で夕凪の人間性を直視すると、人の思い遣りを充分に感じられる人だと思った。そこで五郎は夕凪の事が好きになれると核心していた。

 今日は付き合ってくれてありがとう。

 誕生日に好きな人と一緒に居たのが何より嬉しかった。

 まだ起きているようだったら、メールさせて貰います。

五郎のメールの返信は、数分後に届いた。

 こちらこそ、ありがとう。

 何もしてあげられなかったけど、こんな誕生日で本当に良かった?

 まだ起きてるから、良かったらメールください。

返信されたメールの内容を五郎は微笑みながら読み終えた。

五郎はテレビを付けて、残りの誕生日の時間を静かに過ごそうと考える。しかしテレビを観ても内容に集中できなかった。五郎の頭の中で色んな事が浮かんでいたからだ。
学生時代の頃を思い出すと、昔母親から貰った綺麗な蝋燭を思い出した。その蝋燭を五郎は探し出すと、部屋の明りを消して蝋燭に火を点けた。
蝋燭の火がうっすらと部屋を明るくする。そして蝋が滴り、ほのかに甘い臭いが部屋の中で充満した。
部屋の中が蝋燭の火で少し暖まる。そして五郎の中で寂しさが増していく。
(メグから、どんな答えが返ってくるのか?)
五郎は夕凪の返事が気になりだし、数分刻みで夕凪の返答が気になって仕方なくなりだした。その状態が続き、五郎は夕凪の返答が待ちきれなくなって自分からメールをした。

 メグ、急がす事になるかもしれないけど、少し俺の事を考えてくれた?

夕凪は、即座に返信をした。

 今、十チャンネルを観てますか?

 凄いおもしろい番組をやってますよ。

五郎の話を流そうとする夕凪のメール。それが五郎に結果を想像させる事になる。

(もしかして……)

五郎はある事に気付き、十二時が過ぎると再び夕凪にメールを送った。

 メグ、まだ起きていますか?

 良かったら電話してもいいかな?

はっきりと夕凪の気持ちを聞くつもりで、五郎はメールを送信した。そして夕凪から五郎の携帯に電話が入った。
夕凪は「ごめん、起きてた?」と五郎に気遣う。
夕凪の一言で五郎は全てを悟り、思った事を口に出した。
「メグ、返答はNOなんだね」
普段なら夕凪もストレートに返すが、この時は違っていた。一瞬の間が五郎の予想に自信をつける。
(答えがYesなら、瑞樹の約束に彼女を連れて行く事が出来る。答えがNoなら?)
悪い想像に五郎も息を呑みこむ。次の夕凪の一言を五郎は静かに待った。そんな五郎の居る部屋を、蝋燭の灯りは幻想的な色を映し出していた。

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