2008年12月24日水曜日

第3話:クリスマスイブの約束

もうすぐ五郎の誕生日が近付いている。五郎の誕生日はクリスマスと近い為、幼少の頃は誕生日は祝って貰えてもクリスマスは何もなかった。サンタクロースからのプレゼントを期待して、クリスマスツリーに自分の靴下をかけてみるが、一度もサンタクロースのプレゼントが入っている事がない。そんな苦い過去を五郎は持つ。

(去年に続いて、今年も彼女なしでクリスマスを過ごすのか……)そう思うと余計に寂しさを感じる。そこで気に入った女性の存在があるとないでは少し話が変わってくる。
(メグと付き合う方向で、ここらで告白するか……)
まだ五郎は振られた傷が癒えていない。その上、夕凪との友達関係が始まって期間が短い。五郎は自分に決断を迫った。

(よし! 自分の誕生日、メグに告白しよう)

五郎の考えでは、今、傷が癒えるのを待っても時間の無駄だと判断した。そんな結論を自分に下して、自分の誕生日に告白をする事を五郎は決断した。
一度決断すると五郎の行動は早い。早速、五郎は夕凪に電話を掛けた。

「こんばんは五郎です!」と明るく五郎は挨拶する。
五郎と夕凪には電話を掛ける前の暗黙のルールがある。電話を掛ける前にメールをする。その暗黙のルールを破って五郎は電話した。
夕凪も五郎から事前のメールがなかった為、「あ! こんばんは」と電話に驚いていた。
「メグ、少しだけ俺の話を聞いてくれるかな?」
少し戸惑いながら、「いいよ」夕凪は答える。夕凪は突然の電話で五郎の用件が気になって仕方ない。
「二十三日、俺の誕生日なんだけど。その日、俺と一緒に神戸ルミナリエに行かない?」と五郎は言った。
夕凪はストレートな意見の五郎の話が嫌いではない。「うん、いいよ」と即座に返事した。

五郎の誕生日が近付くに連れて、五郎の中でも少しはプレッシャーを感じている。そんな気持ちを抱える中、瑞樹から連絡が入った。
瑞樹 由果(みずきゆか)、二十七歳。謙虚な姿勢で努力を続けて苦手な事を前向きに克服できる女性。五郎とはバンドやサークルで一緒に活動している為、五郎にとっては最も信頼できる仲間の1人だ。
「畑田さん、二十三日って、予定空いていますか?」普段より謙虚な口調で話す瑞樹。
二十三日は五郎の誕生日。その日は夕凪と一緒に神戸のルミナリエに行く予定が入っていた。
「ごめん。その日は少し用事が入っているんだ」と残念そうな声で五郎は答える。
「え……。そうなんですか……。じゃあ次の日は?」すかさず次の提案を瑞樹は持ち出した。
次の日は夕凪に告白して結果が出ている日。もし付き合う事になったら、五郎は夕凪と一緒に過ごすつもりだ。
「ゆっぴ、実は二十三日に好きな人に告白するつもりなんだ。もし付き合う事が出来たら、その人を連れて行く事になるけどいいかい?」と五郎は言った。
五郎が彼女を連れて紹介してくれる話なら、瑞樹にとって嬉しい話になる。「いいですよ♪」と瑞樹は即答した。
しかし五郎は、「別に俺の誕生日なんて祝う必要もないんだよ」と瑞樹に念を押すような話をする。
それに対して瑞樹は、「え~、畑田さんの祝いをさせてくださいよ~」と五郎にせがむように瑞樹が言った。
五郎は内心、瑞樹の祝ってくれる気持ちが凄く嬉しかった。(ゆっぴ、ありがとう)電話越しに五郎は目を瞑って頭の中で瑞樹に感謝した。
「分かった。二十四日、何時に何処に行けばいい?」と五郎は瑞樹に尋ねた。
「場所と時間を決めておきますので、決まったら連絡します」元気のいい声で瑞樹は答えて電話を切った。

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