2008年7月18日金曜日

最終話:歪んだ想い

「この間は、ご迷惑をお掛けしました」

店の奥で亮はマスターに頭を下げていた。

「あぁ、俺も酔って殴ったからな。俺も悪いわ。すまん、亮」

椅子に座りながら、マスターが亮に対して頭を下げた。

「じゃあ、これで俺は失礼します」

再度、頭を軽く下げて、亮は店の裏の扉から店を出た。


店の外には、亮が用事を終わらせるのを待っていた将太が居た。

「これで納得できたか?」

少し心配そうな顔をしている将太が言った。

「はい、これで思い残す事はありません」

「そっか・・・、じゃあ行こうか」

将太を前に2人は歩き出した。

「本当に田舎に帰るのか?」

「はい」

「そうか・・・」

そのまま黙って2人は歩き続けた。


大きな通りの100円パークに亮の車が見えた頃、再び、将太が口を開いた。

「お前、お酒を造るのが本当に上手かったぞ」

「・・・」

無愛想な亮の態度に将太も話を続けたくない気持ちもあったが、

亮が居なくなる事を考えると寂しいとも思えた。


今朝、将太の彼女の家で目を覚ました亮は、そのまま将太の彼女に朝ごはんをご馳走して貰っていた。

朝から将太の彼女は亮の為に白ご飯を炊いて、味噌汁、出し巻き卵、焼き魚を出してくれた。

(久し振りの味噌汁だな)

お箸を右手の指に引っ掛けたまま、亮は味噌汁を飲んでいた。

「まだ、ご飯のお替りはあるからな」と将太が言った。

亮は何の返答せずに味噌汁を飲んだまま少しだけ頷いた。

「亮ちゃん、病院へ行っておいた方が良くない?」

将太の彼女が亮の怪我を心配した。

しかし、それでも亮は目を閉じながら味噌汁を飲み続けている。

最後は天井の方に顔を向けて、一気に味噌汁を飲み干した。

「久し振りの味噌汁で美味しかったです」

将太と将太の彼女は無愛想な亮に少し呆れていたが、

その一言で、互いの顔を見合わせて少し笑った。

「亮、今日は店を休め。俺からマスターに言っておくから」

「いえ、それはいいです。今日、徳島に帰ります」

「えっ!」

将太の茶碗を持った手がテーブルに置かれた。

「もしかして、実家に帰るって事か?」

「はい」

将太は自分の彼女の顔を見て不思議な表情をして、

亮の気持ちが理解不可能である事を示した。


次に亮は焼き魚をお箸で突いて、白身を取り出して食べだした。

「俺のお酒造りは、将太さんから見て上手でしたか?」

亮はお箸でご飯を掴みながら、それを口の方へ移動した。

「お前は無愛想でさ、他の連中にも嫌われていたけど、



まあ、マスターを含めても店で1番酒を上手かっただろうな」

亮のお箸が少し震えているのか、お箸の先が亮の歯に当たった。

「ありがとうございます」

「なぁ亮、今日は家に帰ってさ、ゆっくり休めってさ」

面倒見の良い将太は、亮に対する心配が頭から離れず「今日は休め」と連呼した。

「将太さん、本当に感謝してます」

大阪に出てからの亮の食事と言うのは、基本的にコンビニの弁当か外食だった。

時々霧子が作る料理もあったのだが、人の温もりの感じる食事は、その時ぐらいだった。

今、亮が口にする物は、何処でも食べられる旨みの感じない物かもしれないが、

人の温もりを伝わせられるのに充分な食事だと知った。


将太と別れてから亮はマンションに帰った。

マンションに着いて扉を開けると目に入ったのは電話だった。

留守番電話のランプが点灯していたので亮は靴を脱いで電話の傍に近付いた。

「ごめんな・・・」

ゆっくりと消去ボタンの方へ指を運び、静かにボタンを押下した。

「ピーッ」

部屋の中で電子音が鳴り、それと同時に亮は首がうな垂れた。

「仕事も片付いたし、後はプライベートだな」

顔を上げた瞬間、そこには以前の隙のない厳しい表情の亮は居なくなっていた。

時刻は夕方の6時を過ぎると亮の部屋は綺麗に片付いていた。

ベッドのマットの上に荷物が集められ梱包されている。

そして引越し業者に電話を掛けた。

「じゃあ鍵は管理人に渡しておきますので、その日に荷物の引越しをお願いします」

話が終わり携帯電話を切ると亮は手提げ鞄を掴んだ。

部屋を見渡すと外の明かりがオレンジ色に照らしてる。

「荷物がなくなると、俺の狭い部屋もこんなに広いんだな」

亮のポケットの中で揺れ始める携帯電話。

その携帯電話を取り出して自分の足元に放り出した。

地面に落ちた携帯の上から右足で踏みつけて、亮は携帯を粉砕した。

「は~、また片づけかしないといけないぞ・・・」

壊れた携帯を拾い、それを部屋に隅に置いてある大きなゴミ袋に放り込んだ。

静かに玄関に向い扉を開けると陽が沈みだしている。

「寂しいものだな・・・」

靴を履き玄関から外に出るとゆっくりと扉が閉まり、亮の歩く足音が響いた。

(これで俺も大阪をお別れだな)

寂しい気持ちを抱きながら、亮は住んでいた場所を去った。


陽が沈み暗い部屋で1人で過ごす女性が居た。

電話の傍で座り込み、その視線は目の前の壁に集中していた。

時々電話が鳴り出すが、その女性が受話器を上げた瞬間、電話は切れる。

ナンバーディスプレイで電話を掛けた相手を確認しても、残されているのは『非通知』と言う3文字。

向井からなのか? それとも亮からなのか?

そう、この暗い部屋で過ごす女性は、亮の電話を待つ霧子だった。


亮が霧子に連絡を取らなくなってから2週間は経っている。

連絡が取れなくなって2日目から、霧子は仕事に出なくなっていた。

無断欠勤。

霧子は部屋の中で、ずっと亮の電話を待っていた。

テレビを付けた状態にして何も食べる事なく飲み物だけで過ごしている。

あれだけ周りから綺麗だと言われていた霧子も、



頬はこけ、目の下は薄黒く、目は真っ赤になっていた。

まともな食事を摂らない霧子は、既に人間極限状態を超えて、いつ入院してもおかしくないぐらい痩せ細っている。

腕や足については骨が浮き出して見えるが、着ている服からも背中と脇腹の骨が浮き出しているのが分かる。

霧子の座る傍には、空いているペットボトルもあれば、空いたワインのボトルさえもある。

所々、その飲み物の零れた後が薄い染みとなっていた。

占い師の話を聞いて、霧子も亮の気持ちを確認したかった。

しかし、それを聞く前に亮は霧子の前に現れる事がなくなっている。

本当の向井の気持ちも分からず、自分の置かれる状況に疑問を抱えた霧子は真実を知る亮を待っていた。

それも今となっては霧子の精神状態も崩壊している。


静かにすれば霧子の耳に電話の音が鳴る幻聴さえも聞こえた。

トイレに行っても幻聴が聞こえ、霧子を電話口の前から離れさせない。

携帯電話の充電器さえも、電話の傍に置いて常に電話の取れる状態を作っている。


1時間後、霧子のマンションのインターホンの音が鳴りだした。

久し振りに聞くインターホンに霧子の精神は、いつもの状態を取り戻す。

「はい!」

誰かに呼ばれた。

そんな風に感じて自然と返事をする霧子。

そして次に取った行動は慌てて立ち上がりインターホンを取った。

「はい!」

インターホンの向こう、1人の男性が小声で何かを言った。

「霧子、悪いが、少しだけ外に出て貰えないか?」

その声が亮の声だと霧子は気付く。

そして「えっ! 私の家には入ってくれないの!!」 と叫んだ。

亮が家に入ってくれない事を霧子は自分を否定されたかのように受け止めている。

「いや・・・、そうじゃなくて、少しだけ顔を合わせて話がしたいんだ」

「だったら、家の中に入ってからでいいじゃない!!」

霧子は感極まって大きな声を上げた。

「分かった・・・。じゃあ少しだけ上がらせて貰うよ」

インターホンを切ると、慌てて霧子は部屋の中のゴミを一箇所に集めだした。

「駄目、こんな部屋では亮に嫌われる。早くしないと・・・」

何かに追い立てられるように霧子は慌しく動いた。


亮が霧子の部屋の扉の前に立つと、少し懐かしい感じがした。

「ここともお別れだな」

思い切って扉のノブを回し、扉を開けると静かに亮を待つ雰囲気が出来上がっている。

(電気も点けずに何をしてるんだ?)

亮は廊下を抜けてリビングのドアを開けると、ジャージ姿の霧子が笑顔で立っていた。

「ごめん、亮。少し散らかっているけど、テーブルの椅子に座って!」

霧子の機嫌が凄く良く、いつもの雰囲気が作り上げられている。

だが亮の目に映る霧子は、病人のようにやせ細っていた。

(あれだけ電話を掛けてきた割には、冷静そうだな)

亮が椅子に座ると、霧子はコーヒーを淹れる為、キッチンでお湯を沸かし始めた。

その瞬間、亮の後にある電話が鳴り出した。

(まだ向井から電話が入ってくるのか・・・)

亮が霧子の方を見ると、霧子は電話を一切気にせず笑顔でお湯が沸くのを待っている。

「霧子、電話が掛かってるぞ」

亮が話しかけても霧子は反応しない。

「霧子!」

自分の声に反応しない霧子に対して、少し苛立ちを感じた亮は大きな声で霧子を呼んだ。

その瞬間、霧子の表情は笑顔から怒りの表情へと変わって行った。

「その電話に出たら、私の前からあなたは居なくなる!」

突然、霧子が叫び、亮の中で緊迫感が走った。

(いきなり、どうしたんだ?)

身の危険を感じる程の霧子の変わりように、亮は部屋を急いで見渡し状況を判断した。

(今迄と違う・・・)

以前であれば霧子の部屋では、花の香りがしていた。

それが、どこか生臭い感じもする。

リビングの床にも所々何か零れた後が残り、ソファーにもお菓子のカスのような物が落ちていた。

(部屋の様子も違うぞ)

亮は椅子から立ち上がり、リビングのドアの前へ歩き始めた。

「何処に行くの!!」

「あぁ、車が気になるから見に行くだけだよ」

今の自分の置かれる状況から、亮は少しでも外に近い方に位置移動したかった。

「今、コーヒー淹れてるから、ちゃんと椅子に座って!!」

また霧子の感情が高ぶったのか少し怒鳴った。

丁度、亮の立つ位置からキッチンの中が見え、霧子が足元から包丁を取り出すのが見えた。

(まずい! 霧子の奴、俺を殺す気じゃないか!)

亮の中で更に緊迫感が高まり、それでもゆっくりとテーブルの椅子に戻って行った。


霧子がお盆にコーヒーカップを乗せてテーブルに近付いた。

その様子を亮は見る事すら出来ない状態に陥っている。

(霧子は何か持ってないのか?)

亮の前にコーヒーを置き、霧子は亮の迎え合わせになる位置に座った。

「どうして私の電話に出てくれなかったの?」

「すまない・・・」

「電話に出れなくても掛け直す事ぐらい出来たんじゃないの?」

「すまない・・・」

亮はテーブルを向くように下を向いている。

その様子に霧子は苛立ちを感じていた。

「謝って欲しい訳じゃない! ちゃんと私の方を向いて!!」

「すまない・・・」

三度に渡る同じ言葉、霧子は怒りの感情が表に出た。

「それでは、まるで私が捨てられるみたいじゃない!!」

「・・・」

「こっちを向いてよ!!」

ゆっくりと亮が顔を上げると霧子は自分のコーヒーを亮の顔にめがけて掛けた。

「アチーッ!」

火傷するような熱さを感じた亮は慌てて椅子から立ち上がり、顔に掛かったコーヒーを手の平で払った。

「何するんだ!」

さすがの亮も霧子に対して怒りを表に出した。

「何を怒ってるの?」

「見て分からないのか? 俺は顔を怪我をしてるんだぞ」

「だから何なの?」

亮は顔に貼っていた湿布を急いで剥がした。

剥がした湿布を無造作に放り投げて、亮は自分のポケットからハンカチを取り出して顔を拭いた。

(こいつ、尋常じゃない・・・)

霧子から目から視線を外すと、次の霧子の行動が読めない。

霧子の目は、まるで亮の後を見ているぐらい何か見通すような目をしている。

(俺の方が出口に近い、今しかないぞ)

そう思った亮は、リビングのドアの方を振り向いて急いでリビングから出ようとした。

それに反応した霧子は、突然、テーブルを勢い良く押して立ち上がり、亮の方に向って来た。

亮の右手はドアのノブを回した瞬間、いきなり後から霧子に蹴られた。

「痛!」

さして痛みが伴う訳でもないが、ここは痛い振りをして霧子に痛い思いをしていると知らせようとした。

しかし、「何が痛いのよ! 私の方が、あなたより、もっと痛い目に遭ってるのよ!!」と更に怒り出した。

「待て!」と言って亮は霧子の手を抑えると、今度は亮の足を蹴ろうとする。

今の状況をどうにも出来ないと思うと、亮は右の平手で霧子の頬を叩いた。

大きな音と共に霧子は後に倒れ掛かるが、そこは亮の手を掴み転倒するのを防いだ。

亮は掴まれた別の手で霧子の腕を引っ張った。

体制が整うと霧子はキッチンの中に入り、シンクの上に置いてある包丁を取った。

(まずい!)

慌ててドアのノブを掴んだが、次の瞬間、霧子は亮の後で両手で包丁を構えた。

ドアが開いているが、ここで動けば背中を突かれるかもしれない。

そう思うと、亮は息を潜め頭の中で色んな事を考えた。

(このままだと動く事もできない・・・)

「刺すなら、刺してもいいが、霧子はそれで良いのか?」

一瞬の事だった、亮が言葉を放った時、体を反転させて霧子の方を見た。

「私の事をバカにして、あなたなんて死ねばいいのよ!」

「俺は霧子を馬鹿にしてはないぞ」

霧子の包丁を持つ手は明らかに震えていた。

(いける、これなら大丈夫だ)

「もう、いい加減にしろ。これ以上、面倒な事に関わりたくない!」

そう言った瞬間、霧子の持つ包丁が空を切った。

空を切った後、包丁は壁に当たり、亮は霧子の包丁を持つ手を掴んだ。

「馬鹿な事はやめろ!」

亮は叫びながら包丁を持つ霧子の手を壁に打ちつけた。

その痛みに耐え切れず、霧子が包丁を落とした瞬間、亮の手から自分の腕を引き離し、亮の頬を叩いた。

霧子の背筋が丸くなり、まだ腹の内に怒りを抑えている様子が伺える。

(もう何を話しても駄目だ。これは逃げるしかない)

亮は玄関に向って急いで走った。

その後から霧子も亮を追って走ってくる。

亮が玄関の扉のノブを掴んだ時、霧子が亮の手を掴みノブから手を引き離そうとする。

「何を逃げてるのーっ!!!!」

狂気の沙汰とも受け止められる叫び声を上げて、霧子は亮の腕を引っ張った。

(もう駄目だ。このままでは危険だ!)

亮はノブから手を離した瞬間、霧子の方へ振り向き膝の内側を蹴った。

男性の力で蹴られた霧子は、膝の内側から激痛が走り、その場に座り込んだ。

それを見届ける事なく、亮は扉を開けて靴に慌てて足を入れた状態でエレベータに向った。

亮がエレベータの前に行くと、エレベータは2台共上の階へ移動している。

(まずい、これでは霧子に追いつかれる!)

慌てて左右を確認すると、右側の奥に非常階段のランプが付いていた。

「あそこか!」

エレベータに乗るのを諦めて亮は非常階段の方に走るが、霧子は追いかける様子がなかった。

それでも亮は走り続け、非常階段すらも2段、3段と飛ばして階段を下りた。

1階の非常階段の扉を開けて、一気にエントランスホールを抜ける亮の姿に、通りがかりの人は何事かと見ていた。


車に乗ると後から追いかける霧子の姿がないのを確認すると、亮は汗が一気に噴出し息も切れた。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・、早く、この場から逃げないと・・・」

しかし、エンジンを掛けると前から霧子がハンドバッグを持って向ってきた。

「え・・・、やばい!」

車の前で霧子が両手を広げて、発信できないように防いだ。

(どうするんだ? こんな事で人を跳ねるなんて考えられんぞ)

亮は左手でバックギアに入れて、後を確認しながら車をバックさせた。

車が下がり亮に逃げられると思った瞬間、霧子は狂気の沙汰に陥った。

「ギャーーーッ!!!」

大声を叫びながら霧子は持っているバッグを亮の車に投げつけた。

手が空いたと同時に今度は亮の車を追いかけだした。

投げつけられたバッグは、車のボンネットに見事に当たり鈍い音を立てた。

その音に反応した亮は、車の前を向いた。


霧子が俺の車を追いかけてくる。

霧子の顔を見ると俺を睨みつけている。

口から泡を吹き、目を真っ赤にして俺に向って走ってくる。

これが俺が望んだ女だったのか・・・。

俺の想いの変化から今度は霧子の想いも潰している。

俺の頭の中では妄想が浮かび、ブレーキを踏んで車を停めていた。

そして車から降りて、向かってくる霧子を強く抱きしめた。

その瞬間、霧子の表情から狂気の様子がなくなり穏やかな表情に変わった。

しかし、それは俺の妄想だ。

現実の霧子は、口から泡を吹き、目を真っ赤にして、俺に襲い掛かる様子まである。

霧子が哀れに見える。

ここで車を停めたい気持ちも強まったが、もう俺は前の自分に戻りたくない・・・。


亮の右足に力が篭り、後に下がるスピードが増した瞬間、亮の車は交差点に入った。

「あっ!」

鉄の塊が簡単に歪み、重くとも軽くともない異音を放った。

『ガシャッ!』

一瞬の出来事だった。

亮の車は左に滑り出し交差点の角に衝突した。

その衝撃で軽く車が浮き、次の瞬間地上にタイヤが着く。

前輪のサスペンションが衝撃を吸収しても、亮の車のガラスは全て地面や車内に落ちて行った。




あの事故で俺は1ヶ月程、病院に入院した。

事故の直後、僅かに覚えているのは、事故に遭った俺を見て薄ら笑いを浮かべる霧子だった。

それも錯覚かもしれない。

運転席側に車が衝突され俺の意識はなくなっている。

結局、退院してから2ヶ月は大阪に残っていた。

その間、霧子のマンションにも行っている。

廊下から見える部屋のカーテンはなく、表に置いてある観葉植物もなかった。

それがマンションから霧子が出て行った事を確信させている。


今でも忘れる事のできない出来事だ。

俺の想いの変化によって引き起こした出来事で、人の想いを学ばされた。

「りょう~!」

昔の事を思い出していたら、遠くの方で俺の妻が呼んでいた。

田舎臭い妻だが、俺にとっては本当に愛情を注げる相手だ。

その妻が愛娘を抱きながら片手で大きく手を振っている。

「やれやれ子供を落とすなよ」

そう言って、俺は妻の所に向って走った。


俺の想いの変化は・・・、霧子を通じて、

今も誰かを苦しませているかもしれない。


終わり

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